みなさん、保有株を含み損のまま放置してませんか?
「含み損があっても売らずに気長に待つ」というスタイルはもちろん大事な投資戦略ですが、
銘柄・保有期間が同じでも、節税をするかしないかでトータルリターンは大きく差が出ます。
そこで紹介する節税方法と言うは、「損出し」です。
「税」と聞くだけで苦手意識を持つ人もいるかもしれませんが、超カンタンにできます。
メリットや注意点を丁寧に解説するので、ぜひ実践してみて下さい。
✓結論
- 「損出し」をすれば、保有銘柄を変えることなく節税ができる
✓注意点
- 買い戻しは、「損出し」した翌営業日以降に行うこと
- 「損出し」は、12月の最終営業日から2営業日前までに行うこと
- 株の保有期間がリセットされ、長期保有が条件の株主優待が貰えなくなる可能性
- NISAは「損出し」の対象外
「損出し」とは?
株式における「損出し」とは、
含み損のある銘柄をあえて売却して、損失を確定させることです。
そうすることで、次のような節税効果が得られます。
- 確定益があれば、既に徴収された20%の税金を取り戻せる
- 確定益が無ければ、のちに確定益が出た際に発生する20%の税金をカットできる
さらに、
「損出し」した株を買い戻せば、保有銘柄を変えることなく節税することができます。
ただし、買い戻しには注意点があるので、後述します。
株の税金について簡単に説明すると、こんな感じです。
- 年間の利益と損失を合算して、残った利益に対して20%の税金を払う。
- 合算してマイナスの場合は税金を払う義務はない。
その税金のルールを利用して考えられたのが、「損出し」です。
損失額をあえて大きくして、残る利益を小さくすることで税金を減らす仕組みです。
「利益」とは何なのか? と言うと
売却益や配当金の収入による確定益のことで、ここに20%の税金が掛かります。
「でも、今まで株の税金を意識したこと無いけど、いつ支払ったっけ?」
と思うかもしれませんが、大半の人は自動で株の口座から天引きされてます。
と言うのも、多くの人が使っている「特別口座 源泉徴収あり」の口座では、確定益が出ると自動で20%の税金を納めてくれて、損が出たら払いすぎた分を自動で返金してくれます。
つまり、確定益がある状態というのは、既に20%の税金を払っている状態になります。
以上のことを踏まえると、確定益があれば「税金を取り戻せる」仕組みが見えてきます。
確定益がある状態で「損出し」すれば、トータルの確定益は減少。
既に払った税金は「払い過ぎ」の状態にでき、その払い過ぎた税金を取り戻せる。
一方で、確定益が無ければ「損出し」の節税効果は無いの?
と思うかもしれませんが、そんなことはないです。
確定益が無ければ、税金は取られてないので、「損出し」しても税金は還付されない。
しかし、後から出た確定益が損失額を上回るまで、税金は発生しない。
「損出し」で確定した損失額と、後から出た確定益とのトータルで
プラスになった確定益に20%の税金が掛かるので、トータルでマイナスのうちは、税金は発生しません。
また、「損出し」と確定益のどちらが先でも、節税金額は同じになります。
「損出し」の効果
「長期保有株とか塩漬け株なら、めっちゃマイナスでも気にせずガチホしてるわw」
って方は多いと思います。
しかし、含み損のまま放置した場合と、「損出し」した場合とでは収支に大きく差が出ます。
放置しているだけでも配当があれば税金で20%引かれますし、
他の保有株から得られる配当や、売却益も同様に20%引かれるので、金額としてかなり大きいです。
金額を具体例で比較してみます。
上の例では「損出し」したことによって、12万円も支払う税金に差が付きました。
20%という税金の威力がハンパないので、「こんなにお得なのか!」
ということが分かったかと思います。
先述している通り、「特別口座 源泉徴収あり」であれば、ここまでの面倒な計算や税金の納税・還付まで自動でやってくれます。
「損出し」における3つの注意点
「損出し」するにあたり、3つの注意点を抑えておきましょう。
- 「損出し」したその日に買い戻しは厳禁
- 【損出し期限】 12月の最終営業日から2営業日前までに行うこと
- 株の保有期間がリセットされ、長期保有が条件の株主優待が貰えなくなる可能性
- NISAは「損出し」の対象外
それぞれ詳しく説明していきます。
「損出し」したその日に買い戻しは厳禁
「損出し」した日に、買い戻しをしてはいけません。
買い戻しは翌営業日以降に行いましょう。
理由は売却した株の損失額と、買い戻した株の購入額で
購入単価を平均化されてしまい、損失額が少なく計算されてしまうためです。
株のルール上、仕方のないことなので
そういうものだと覚えておきましょう。
買い戻しの手順は、後述してますので
こちらを参照ください。
「損出し」の期限は?
「損出し」は、12月の最終営業日から2営業日前までに行いましょう。
その日を過ぎると、翌年で精算することになります。
2022年の場合は12月28日(水)が期限になります。
株の保有期間がリセットされ、長期保有が条件の株主優待が貰えなくなる可能性
銘柄によっては「〇〇年継続保有」と言った、長期保有が条件で株主優待が貰える場合があります。
このような銘柄を「損出し」した場合は、これまでの保有期間がリセットされてしまい
「今まで貰えていた優待が届かない…..」なんて可能性もあります。
しかし、銘柄ごとで保有期間の考え方・条件が違うため
全ての銘柄で起こりえる訳ではありません。
あくまでも貰えなくなる可能性を考慮して、「損出し」するようにしましょう。
NISAは「損出し」の対象外
NISAは非課税なので、NISA口座で買った株はそもそも税金が取られてません。
なので、「損出し」しても節税効果は全くありませんので、注意しましょう。
「損出し」と買い戻しの方法・手順
「損出し」した後に、買い戻す場合は注意点があると説明しましたが、実際に、どうやって買い戻せば良いか解説します。
やり方は下記の2点あります。
では、さっそく詳細の説明をしていきます。
現物で翌営業日以降に買い戻す方法
このやり方は非常に簡単で、以下の手順で行いましょう。
- 「損出し」する銘柄を売却する
- 翌営業日以降に同じ銘柄を買い戻す
ただし、翌日以降に株価が上がってしまったら
「損出し」で売ったときより、高い株価で買い戻すことになるので
その分損してしまうデメリットがあります。
そのデメリットを解消できるのが、次に紹介する
信用買いを活用する方法です。
信用買いを活用する方法
この方法では、「損出し」で売却したときと、同じ価格で買い戻せるメリットがあります。
- 「損出し」する銘柄を売却する
- 同じタイミングで信用買い
- 翌営業日以降に信用買いした株を現引き
信用手数料が掛かるので、なるべく翌営業日に現引きするようにしましょう。
ちなみに、現引きとは信用買いでレンタルしてる銘柄を買い取って、現物と同じように自分の株として保有することです。
参考までに、同じタイミングで「損出し」と信用買いができる方法も紹介します。
取引時間外に「損出し」による成行売りと、信用取引による成行買い注文をしておけば、同じ価格で売り注文・買い注文が可能になります。
取引時間外とは9:00以前、もしくは11:30~12:30のことを指します。
この方法を使えば、売り注文 → 信用買い注文 する間に変動する株価を気にすることはありません。
「損出し」後に確定益を出せなかったら?
その年の利益の合計よりも、「損出し」した金額の方が大きいまま
確定益を出せないまま「損出し」の期限になってしまった場合はどうなるのか?
要するに、確定益より損失の方が大きい状態で、翌年を迎えてしまった場合について解説します。
結論から言うと、確定申告すれば、翌年に損失額を持ち越すことができます。
このことを「繰越控除」と言い、3年間の持ち越しが可能です。
ただし、繰越控除するには毎年確定申告が必要になり、3年持ち越すには3回の確定申告が必要になります。
具体例で解説します。
【2020年】
- 確定益と損失のトータルが-100万円だったので確定申告して、繰越控除した。
【2021年】
- 確定益と損失のトータルで+20万円の利益を出すことができた。
- 本来であれば、利益の20%で4万円の税金を支払うが、繰越控除によって税金は0円になった。
- 残りの繰越控除 = 100万円 - 20万円 = 80万円
- 確定申告して、翌年に80万円の繰越控除をした。
【2022年】
- 確定益と損失のトータルで+40万円の利益を出すことができた。
- 本来であれば、利益の20%で8万円の税金を支払うが、繰越控除によって税金は0円になった。
- 残りの繰越控除 = 80万円 - 40万円 = 40万円
- 確定申告して、翌年に40万円の繰越控除をした。
【2023年】
- 確定益と損失のトータルで+10万円の利益を出すことができた。
- 本来であれば、利益の20%で2万円の税金を支払うが、繰越控除によって税金は0円になった。
- 残りの繰越控除 = 40万円 - 10万円 = 30万円
- しかし、2020年から繰越して3年間経つので、2024年には繰越しできない。
3年間で「損出し」した金額以上に利益を出さないと、もったいないので
その年に一気に「損出し」せず、翌年に分割するなど、計画的に「損出し」をするのもいいでしょう。
「特別口座 源泉徴収なし」や「一般口座」でも「損出し」できる?
「特別口座 源泉徴収なし」や「一般口座」でも確定申告すれば「損出し」でき、
得られる節税効果に、差はありません。
「特別口座 源泉徴収あり」と違って、納税や還付を自動でやってくれないので
確定申告をして、まとめて税金を精算することになります。
まとめ
「損出し」のメリットは十分伝えてきましたので、最後に注意点だけまとめます
- 買い戻しは「損出し」した翌営業日か、それ以降に行うこと
- 「損出し」は、12月の最終営業日から2営業日前までに行うこと
- 長期保有特典の銘柄は、保有期間がリセットされる可能性あり
- NISAは「損出し」の対象外
- 年間の確定益より、損失額の方が大きければ確定申告をして繰越控除すること
日本の株式税率はマジで高いので、「損出し」の方法はぜひ覚えて下さい。
実践して還付金の額を見れば、「何で今までやってこなかったんだ」と実感すると思います。
確定申告についてまとめた、こちらの記事でも節税の方法を紹介しています。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。
コメント