【プロは必ず見てます】ROE、ROAとは?株価上昇の共通点を解説

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何を見て銘柄選択すればいいんだろう。目安があれば教えて欲しい

本記事では、長期投資で必ず見るべき「ROE」と「ROA」の指標について解説します。

株価が上昇し続ける銘柄には共通点があり、ROEとROAが密接に関係しています。

そのため、プロや海外投資家が最も重視している指標とも言われています。


先に、この記事の結論です。

長期で株価が上昇する銘柄は、共通して下記条件を満たしています。

  • ROEが10%以上ある
  • ROAが5%以上ある
  • ROAの数値に対して、ROEが2~3倍以内の差である

実際の業績やチャートも交えて、用語を解説していきます。

ROEとは? 目安は10%以上

ROEとは、「return on equity」の略で、自己資本利益率とも呼ばれます。

企業の収益力や経営効率を測る指標で、「その企業がどれぐらい効率良く稼いでいるか」を数値化したものです。

ROEは、10%以上あると収益力が高いと言われ、投資判断の目安となります。

以下の式で、ROEは算出することができます。


自己資本は、企業が調達した資金のことで、発行した株式も含まれます。

つまり、「株主から調達した資金を使って、どれだけの利益を生み出せているか」が分かるので、収益力の指標となる訳です。

仮に、「利益金額 = 収益力」で判断してしまうと、取扱い金額が大きい大企業ほど、収益力が高いことになってしまいます。

しかし、中小企業が大企業と同じ金額の利益を出していたら、その中小企業の方が収益力が高そうなのは感覚的に分かるかと思います。


そこで、その収益力を具体的に数値化するために作られた指標が、ROEです。

下図のような、純利益と自己資本の関係にある2社で、収益力を比較してみます。

一見、純利益を多く出しているC社の方が収益力があるように見えますが、ROEを計算するとA社の方が収益力が高いことが分かります。

このように、利益金額や企業規模だけに囚われず、収益力を評価できるのが、ROEの利点となります。

ROEは同業種で比較する

ROEの比較をする際は、同業種の企業と比較することが有効です。

その理由は、業種によってROEの水準は大きくことなるので、異業種との比較では、収益力の優劣が付け難いためです。


下の表は、業種別でROEの水準を示したものになります。

日本取引所(JPX)が、2022年3月期の決算を集計したデータを引用して、表を作成しております。

見て分かるように、大きくバラツキがありますが、その理由の一つとして、業種ごとで収益に影響する外的要因が異なるためです。

例えば、2022年は海運業が81.85%と、異常に高い数値になってます。

この理由は、コロナウィルス蔓延によるサプライチェーンの混乱で、コンテナ船バブルが起き、海運業が爆発的な収益を得たためです。

そのため、バブルの恩恵を受けていない別業種と比較しても、海運業のROEが高くなるのは当然なので、その比較に意味はありません。

しかし、海運の企業同士でROEを比較すれば、同じバブルの状況下でも、どちらの企業が収益をより多く出せたか分かるので、収益力の差を明確化できます。

海運業3社の比較

例えば、海運の代表企業である日本郵船(9101)のROEを比較したい場合は、同業種の川崎汽船(9107)や、商船三井(9104)などと比較してみると良いです。

この場合、川崎汽船の売上高が最も少ないですが、収益力は3社の中で圧倒的に高いです。

「同業の大手企業ならどこでも同じ」とか、「一番大きい会社が有利」という考えは誤った認識で、このように収益力を比較すると、実力の差が見えてきます。

同業種でもライバル企業と比較する

同業種でも主力事業は異なることが多いので、なるべくライバル企業と比較した方がいいです。

例えば、輸送機器の業種で、トヨタ自動車(7203)を比較したい場合は、デンソー(6902)と比較するよりも、本田技研工業(7267)や日産自動車(7201)などと比較した方が良いです。

トヨタは自動車 “本体” を作っているのに対して、デンソーは自動車 “部品” を作っており、業種は同じでも、競争相手が異なるためです。

トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車の3社で比較した結果は以下の通りです。

この比較から、トヨタが売上高、収益力共に最も高いという結果になりました。

このように、同業種でもライバル企業と比較することで、企業の実力差を見ることができます。

過去のROE推移もチェック

ROEはその年の数値だけでなく、過去のROE推移も見て収益力を判断しましょう。

外的要因で企業の成績が左右されることも多いので、その年のROEだけでは、その企業の潜在的な収益力を判断することが難しいためです。

再び海運業を例に挙げると、2022年の81.85%という驚異的な数値は、バブルによるものであり、一過性に終わると推測できます。

日本郵船:過去10年のROE、ROA

こちらのグラフは、日本郵船の過去10年間のROEとROAの推移になります。(ROAについては、後のパートで説明します。)

コンテナ船バブルが起きる前の、2020年以前のROE水準を見てみると、常に10%以下であり、一時はマイナスに転じる場面もありました。

つまり、日本郵船の本来の実力は、バブルが無ければ、ROEが10%にも満たないことが分かります。

キーエンス:過去10年のROE、ROA

一方で、収益性の高いことで有名なキーエンス(6861)のROE推移を見てみましょう。

この10年間、常にROEが10%以上で推移しており、安定して稼げていることが分かります。

キーエンスのような、過去のROEも高水準で維持できている企業は、収益力が実力として備わっていると言えます。

以上のように、銘柄を分析するときは、過去のROEを必ずチェックして、収益力の安定性をチェックしておきましょう。

高ROEだけの判断は危険

高いROEを示していても、自己資本が小さい銘柄には注意しましょう。

自己資本が小さいだけで、収益力と無関係にROEが高くなっている可能性が高いためです。

そのような企業は、財務が乏しく、経営が不安定なリスクがあります。


ROEの計算式から、ROEが上昇する要因には以下の2点あります。

  • 分子の当期純利益が増える
  • 分母の自己資本が減る

本来は、当期純利益を増やすことで、ROEを高めることが収益力向上の本質なのですが、自己資本が少ないだけでもROEは上昇します。

例えば、こちらの表をご覧ください。

E社とF社は、どちらも純利益は同額です。

それでも、F社は自己資本が少ないため、E社よりもROEが圧倒的に高い結果となります。

しかし、自己資本が少ないことが理由で、ROEが高くなったF社を、収益力が高いと評価することはできません。

F社の膨大な負債がリスクであることは明白で、投資妙味があるのはE社の方になります。


このように、単にROEが高いだけで収益力を判断することは、危険なことが分かったかと思います。

そこで、ROEの妥当性をチェックする手段として、ROAの値を確認することが有効になります。

では、ROAとは何なのか? 次のパートで解説していきます。


ROAとは?目安は5%以上

ROAとは、「Return on Assets」の略で、総資産利益率とも呼ばれます。

ROEと同様に、ROAは企業の収益力や経営効率を測る指標で、「総資産を使って、どれぐらい効率良く稼いでいるか」を示しております。

ROEとは異なり、ROAは借金などの負債も加味した数値になります。

ROAは、5%以上あると収益力が高いと言われ、投資判断の目安となります。

以下の式で、ROAは算出することができます。

総資産は、自己資本と負債を含む、全ての合計資産になります。

新たに設備投資をする場合、金融機関から借金をして資金を調達することが多いですが、そうした「負債も含めて効活用できているか」が、ROAの意味合いになります。

ROEとROAを併用して安全性を見極める

自己資本が小さいために、ROEが高くなっている状態は、経営が不安定なリスクがあると先ほど解説しました。

そこで、ROEの妥当性を確認する方法として、ROEとROAの差を見ることが重要になります。

ROAの数値に対して、ROEが2~3倍以内の差であれば、安全性が高い企業と言えます。

その理由は、借金の比率が少ないほど、ROEとROAが近似するためです。

逆に差が開きすぎている企業は、多額の借金によって利益を稼ぐ「レバッジ経営」と呼ばれる状態になっています。

レバッジ経営は、少額の手元資金で積極的に借金をすることで、設備投資を行い企業を拡大させていく経営戦略です。

稼げているうちは問題ありませんが、ひとたび事業がコケると、一気に会社が傾いて倒産リスクが高まります。

株価も乱高下が激しい傾向にあり、長期で保有するにはリスクの高い投資と言えます。

実際の数値で確認

こちらの表は2022年度の4社のROE、ROAの実績です。

tripla(5136)のROEとROAの差は約7.5倍、シライ電子工業(6658)は約6.8倍であり、どちらの企業もレバッジ経営の状態となってます。

triplaは、2022年に上場したばかりの企業で、急成長の最中ですが、自己資本比率は12%と財務は不安定です。

同様に、シライ電子工業も自己資本比率が17.6%と、財務の安全性は低いと言えます。


一方で、キーエンス(6861)のROEとROAの差は約1.0倍と、ほぼ差はありません。

それを裏付けるように、自己資本比率は93.5%と、財務は超健全です。


日産化学(4021)のROEとROAの差は約1.3倍で、自己資本比率は73.6%と、財務は健全です。


以上のように、銘柄分析の際には、必ずROAとの差を見ることで、ROEが高すぎないかチェックするようにしましょう。

ROE、ROAが高い企業は株価が成長する

ROEとROAが高い企業は、長期で株価が上がりやすい傾向があるため、プロや海外投資家から好まれます。

では、本当にそうなのか?

実際の業績とチャートを比較しながら、その傾向を分析したいと思います。


これまでの要点をまとめると、ROEとROAの数値の目安は以下の3点でした

  • ROE:10%以上
  • ROA:5%以上
  • ROAの数値に対して、ROEは2~3倍以内の差

この条件を満たす企業を3銘柄ピックアップしてます。

3銘柄とも別々の業種から紹介したいと思います。

キーエンス(6861)の分析

キーエンスは、測定機器の製造販売をしており、電気機器の業種になります。

先ほど載せた表になりますが、改めて10年間のROE、ROAの業績を見てみましょう。

ROE、ROAは共に目安以上の数値を維持しており、ROAに対するROEの差も2~3倍以内にあります。

つまり、収益力が高く、財務の安全性も高いことが読み取れます。

では、次に株価のチャートを見てみます。

一目瞭然ですが、チャートは綺麗な右肩上がりになっており、この10年間で株価は約13倍に成長しております。

では、同業種の横河電機(6841)のROE、ROAと比較してみましょう。

ROE、ROA共に、キーエンスが圧倒しているのは明らかです。

では、この結果がチャートにどう影響するのか見てみましょう。

このチャートを見れば、もう説明は不要かと思いますが、キーエンスの方が圧倒的にパーフォーマンスが高いです。

このように、ROE、ROAの高い企業は、株価が成長しやすいことが分かります。

日産化学(4021)の分析

日産化学は、農薬や機能性材料、医薬品などを製造する化学メーカです

10年間のROE、ROAの業績は以下の通りです。

日産化学もROE、ROAは共に目安を超えており、両指標の差も2~3倍以内を維持しています。

次は10年間のチャート推移です。

日産化学も10年間の長期で上昇を続け、株価は約7倍に成長しています。

では、同業種のクレハ(4023)とROE、ROAの比較してみましょう。

この比較でも分かる通り、日産化学が2倍以上も高い数値となっており、収益力の差は歴然です。

最後にチャートの比較です。

これも見て明らかなように、日産化学の株価成長がクレハを大きく上回っております。

時間経過と共に、株価の差は開いていく一方であることが分かります。

KDDI(9433)の分析

KDDIは、誰もが知っている情報・通信業の大手キャリアです。

10年間のROE、ROAの業績は以下の通りです。

2016年は会計基準が変わった関係でデータはありませんが、ROE、ROAの目安と、両指標の差は条件を満たしております。

次は10年間のチャート推移です。

KDDIは、株価は約4倍に成長しています。

では、同業種の日本電信電話(9432)とROE、ROAの比較してみましょう。

日本電信電話の通称は、皆さんお馴染みのNTTです。

2021年まではKDDIの方がROE、ROA共に高い数値を出しておりましたが、NTTが徐々に追い上げ、2022年にNTTのROEが上回り、収益力は互角の状況です。(NTTも2018年のデータはありません)

では、チャートの比較をしてみましょう。

KDDIの方がわずかに上回っておりますが、NTTが後半に掛けてROE、ROAを伸ばしたことで、株価の差も狭まっていることが分かります。

収益力に大きな差があった「キーエンス ー 横河電機」、「日産化学 - クレハ」の比較では、時間経過と共に、株価の差が開く一方でした。

以上のことから、ROEとROAが高い企業は、長期で株価が上昇するという結論になります。

まとめ

ROEとROAは収益力を測る指標ということを解説してきました。

長期で株価上昇を続ける銘柄は、「収益力が高い」という共通点がありました。

以下の項目を満たす企業は、「収益力が高い」と言えます。

  • ROEが10%以上ある
  • ROAが5%以上ある
  • ROAの数値に対して、ROEが2~3倍以内の差である

企業によっては、偶然その年が好調だった可能性もあるので、過去の業績を確認することも大切です。

以上を踏まえて銘柄分析することで、長期投資のパフォーマンスは格段に上がるはずです。

ただし、結果が出るまでに、何年も掛かる可能性がありますので、根気強く取り組める人にこそオススメの戦略です。


以下の記事で、ROE、ROAを加味したオススメ銘柄を紹介しているので、良ければご参考下さい。

本記事は以上になります。
皆さんの投資に、少しでも参考になれば幸いです。
最後に、私の書いた考察通りに必ず株価が動く訳ではありませんので、その点をご了承いただいた上で、投資の際は自己責任でお願い致します。
最後まで御覧いただきありがとうございました。

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